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小学生の頃、ノートを忘れたりすると先生に言って学校の正門の前のタキザワ文具まで買いに行った。狭い間口の奥はいつも薄暗く人ひとりがようやく通れる程度の隙間を残して両側は天井まで文具が積み上げられている。その廊下の椅子におばあちゃんが座っていて玄関口から「ノートちょうだい」というとおばあちゃんがごそごそとそこらの棚からノートを出してくれた。「消しゴムちょうだい」といってもやっぱりごそごそと出してくれた。まるで配給のようだった。
今から30年も前のことではあったが当時から文具屋も「選んで買える」タイプの店があった。中学生になるとそんな選べる店で柄の入ったシャーペンやら匂いのついた消しゴムやらどうでも良いものを喜んで買うようになり、タキザワ文具には立ち入ることはなくなった。
大学入学とともに地元を離れた。1年ほど前、里帰りの途中にタキザワ文具が閉店したことを知った。今年の初め僕たちが再び地元に戻った矢先、小学校の前の電柱におばあちゃんのお通夜の知らせが貼られているのを見つけた。夏の初め、本格的な暑さがおそってきた頃ことだ。 |